「うす紙を1枚1枚重ねるような日々を送れたら幸せです。」
淡々と過ぎゆく日々の中で、丁寧な料理を変わらずつくり続ける屋木夫妻。
その謙虚な姿勢は、食材の持ち味を生かした料理にも表れている。
夫婦で営むフランス食堂〈Quenelle(クネル)〉は、狸小路のアーケードを抜けた先にある。
店に入ると、ヨーロッパのレトロな灯を思わせるあたたかい照明が人々と料理を照らす。
料理をお目当てに訪れる人々も穏やかな雰囲気だ。
屋木夫妻はそれぞれ、東京とフランスのレストランで料理に携わり、多様な価値観に触れる中で「自分たちもお客様が元気になるようなお料理を提供できたら」と2008年に〈クネル〉をオープン。ここでも徳光珈琲の豆が使われている。
きっかけは開店して間もなく、徳光オーナーが来店した際にサンプルで渡した珈琲豆だった。奇遇にも、屋木さんの修行先で扱っていた珈琲豆は、かつてオーナーが修行していた堀口珈琲の豆だったのだ。
そんな出会いもあり、当初から徳光珈琲の豆を使用。特にエスプレッソが好みなんだとか。
屋木(奥さま):エスプレッソで使用している豆は、酸と苦味、濃さが絶妙なバランスで、食後には自家製のビターなキャラメルアイスとの相性も良いんです。
徳光珈琲の豆を使用したエスプレッソ
徳光オーナーについて印象を伺うと、思わず頷いてしまった。
屋木:不眠不休の方。笑 お休みは元旦くらいでしょうか…。
季節に応じて、様々な国から状態の異なる豆が届く中、同じ味わいに仕上げられるところがプロの職人だと思います。料理人にも通ずるものがありますね。
たしかに、オーナーがいつ休んでいるのだろうと気になるのもわかる。そして、徳光珈琲がつくり続ける焙煎豆と〈クネル〉の料理には何か共通するものがあるのでは、と思えてきた。
店名の〈クネル〉は、フランス南東部の伝統料理のことで、ドイツの「クネーデル」という団子料理に由来しているそうだ。
フランスでは、白身魚のすり身にエビの濃厚なソースをかけて食べる。
すり身自体の味わいは、はんぺんにも似ているが、本場のクネルはもう少しボリュームがあるらしい。
それをさらにアレンジして、オムレツのようにふわっと軽い仕上がりにしているのが屋木流だ。
初めて食べたが、本場の味を確かめてみたくなるほど美味しい。
フランス南東部の伝統料理「クネル」
クネルを口に含んだとき、しっくりきた。
食材の持つ個性を理解せずには生まれないシンプルさがある。
それは、バランスのとれた焙煎豆をつくり続ける徳光珈琲にも言えることかもしれない。
「日々、変わらずに継続していけたら」と話していた屋木夫妻の謙虚さは、
クネルさながらの主張しすぎない柔らかな味わいに表れてるようだった。
本執筆にあたり、「飾らず、ありのままを書いてください」と言って下さった屋木さんには誇張しすぎと思われても仕方がない。それほど、身も心も満たされるものだったのだから。
〈クネル〉が重ねるうす紙の端に、寄せ書きをさせてもらったような心地だ。
【徳光珈琲からのメッセージ】
変わらぬ仕事が美味しさを生む。
東京三田にあるコートドール。シェフの斎須さんの片腕として研鑽を重ね、奥様とおふたりで切り盛りされているとっても癒されるお店です。
札幌にもあるコートドールには年一回、斎須シェフがいらっしゃっていたので、その度に伺っていました。
屋木シェフはいつも裏方で臨時スタッフとしていらっしゃっていましたね。
三田のお店に伺った時には、ピッカッピカに磨かれた厨房の中に入れさせてもらい、
キビキビ仕事をしているスタッフを見て感動したものです。
クネルさんもいつもピカピカですね。 丁寧な仕事が垣間見えます。
定番の赤ピーマンのムースは是非食べていただきたいです!
私にとって美味しい料理とワインが一番の休養です。
〈店舗情報〉
Quenelle
北海道札幌市中央区 南2条西8丁目
電話予約:011-876-8778