札幌の街並みから遠ざかると、少しずつ見えてくる山の表情。となりまちの小樽まで繋がる道路へ入ると、海風をほのかに感じはじめる。その銭函の一角に、ひと目を引くやさしいオレンジ色のジェラート店〈Wavy Hill’s(ウェイビーヒルズ)〉はある。牧場まで毎回足を運んで搾りたての生乳を仕入れ、フレッシュなミルクを感じるジェラートを届けている。
左:服部 汀(みぎわ)さん 右:竹内 はるさん
営んでいるのは、20代の若いふたり。親戚同士で年も近い。
互いに自然体で居られることが、豊かな発想力へと繋がり、店構えやジェラードづくりにも生かされている。
学生の頃は、服飾を学んでいた汀さんと、調理専門学校へ進んだはるさん。
それぞれ別の道を歩みながら、ふたりはどのようなきっかけでジェラートを始めたのだろう。
最初に転機が訪れたのは、汀さんのお母さんが何気ない会話の中でこぼれた一言。
「ジェラートのお店やってみたいんだよね」。
餃子屋を経営する両親の様子を見て育った汀さんは、「え、やりたい!」と本気にした。
その話をはるさんへ打ち明けると、「いつかジェラート屋をやってみたい」と互いに同じ思い描いていたことが分かったという。
服部:本当はファッションの道を考えた時期もありました。でも、働きたいと思えるブランドがなかった。自分の店を持てば、好きなデザインができて、責任を持って全てできる。そっちの方に惹かれたんです。やりたいことに真っ直ぐでいられるスタイルが、今の私たちには合ってるなと思います。
竹内:お互いにこれからの進路を考えていた時期にジェラート屋の話が舞い込んできたので、タイミングも良かったよね。
そうして、ジェラート屋の立ち上げに向けて機運が高まったふたり。
どこに店を構えようかと物件を探していた矢先、汀さんの両親が営む餃子屋の隣にあるコンビニが空き地になるという情報を聞きつけ、すぐに交渉。またしても絶好のタイミングで場所が決まり、思い入れのある銭函の地で、ジェラート屋を本格化させることになった。
コンビニの跡地を感じさせない温もりある佇まい。
内装にもふたりのこだわりが詰まっている。
2020年にオープンしたWavy Hill’s。右も左もわからないところから、手探りのジェラートづくりは始まった。ジェラテリアに足を運んだり、レシピ本を参考にしながら試行錯誤を重ね、ミルクのコクが感じられる味わいにたどり着いたという。
こだわりのミルクは、北海道石狩にある牧場の搾りたての生乳を朝取りに行く。その後30分以内には、店の機械で低温殺菌をしてジェラートのベースづくりに取りかかる。そうすることで、フレッシュで上質な味わいを保っている。
ミルクベース
ちなみに、「ミルクは冬の方がおいしい」というのは意外だった。牛の消費カロリーが減る分、乳脂肪分が高くなる。そのため、ミルクのコクが深くなるのだそう。それもまた、牧場の顔が見えるジェラートならではの楽しみ方。食べているうちに、味わいの変化に気づけるようになっているかもしれない。
さらにミルクのほか、独自に見出してきたフレーバーは70種類以上。
季節に合わせて、夏はさっぱりとしたフレーバーを豊富に揃え、冬は濃厚なフレーバーが多い。
定番の味はミルク。ソルト&キャラメルやチーズ系のフレーバーも人気。
「銭函で憩いの時間を過ごしてほしい」という思いをかたちに。
豊富なジェラートはもちろん、カフェメニューも充実している。
珈琲ドリンクには、開店当初から徳光珈琲の豆を使用。
「香り高く奥深さもあって、且つジェラートの良さも生きてくれる。それが決め手になり、徳光さんの豆を扱っています。」と汀さん。
そして今回、Wavy Hill’sと徳光珈琲のコラボが実現し、家庭でも楽しめるコーヒージェラートが完成。
頑張ったご褒美にひと口、さらにもうひと口。と、美味しさと共にしあわせを身体に溶け込ませてみてほしい。
徳光珈琲の味わいを生かしたジェラートづくりについて、汀さんに話をうかがった。
ー どんなきっかけからコラボすることになったのでしょう?
服部:1年程前に徳光さんから、地元・石狩の素材を使ったジェラートを作りたいという話をいただいて、うちは石狩の牧場でとれた生乳を使ってるので、ぜひやりましょうという話になりました。
ー 徳光珈琲の個性を生かしたジェラートづくりで心がけたことは?
服部:「できるだけ甘みは抑えて、珈琲感が強いものが良い」という徳光さんからの要望があったので、珈琲感が引き立つように意識しました。
ミルクのバランスが難しかったですね。珈琲感が強すぎても、食感がパサついてしまう。調整しているうちに、「シンプルが1番いいね」となったんです。砂糖は極力使わずベースの甘さだけ。珈琲の味もしっかりあって、ミルキー感も出るようにしました。
ー 試作段階では、すんなりと商品の味は決まったんでしょうか?
服部:何度か試作して徳光さんに試食してもらっての繰り返しで「この味でいこう」と決まったんですが、正直不安もありました。
Wavy Hill’sとしては、牛乳の甘みが残る濃厚さを大事にしていたので、もし徳光さんがスッキリ感を求めているのだとしたら、今の私たちでは出せないかもって。
私なりに気に入ったものができて、自信はあったけど、もしそれでダメだったら断わろうと思っていました。
そしたら、「これだね!」と言って下さって。結果は良かったんですけど、緊張の日でしたね。あんまりその日の記憶がないです。笑
こだわりが詰まったコーヒージェラートはWavy Hill’s定番のミルクジェラートと共にセットで販売。石狩市のふるさと納税とオンラインショップから申し込みが可能。
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店をスタートして3年目。
Wavy Hill’sは新しい景色に向かって前進している。
2022年は都内で開かれた百貨店の催事にも積極的に出店。銭函から全道、そして全国各地で食べてもらえる機会を増やしたいと、果敢に挑戦し続けるふたりの輝きは眩しい。
また、人が集う場づくりへのアイディアも豊富なふたり。
広い駐車場スペースを利用してイベントを開いたり、海が近い立地を生かして、海のゴミ拾いなどの環境活動もしたいと想像を膨らませている。
今日も、若きふたりが手がける銭函のジェラートから
ひとり、ふたりと笑顔が広がっているのだろう。
店内はカフェ利用もできるので、となりまちへの移動途中や休日に立ち寄ってみるも良し。
珈琲片手にジェラートで憩いの時間を過ごしてみては。
【徳光珈琲からのメッセージ】
自由な発想で多種多様な味わいを表現するジェラートアート!
きっかけは、石狩本店におふたりと親御さんがいらして、営んでいる餃子屋さんの話になり、帰り際に汀さんが「ジェラート屋さんをやるので珈琲を!」というお話しからでした。「ん!?おふたりがやるの?」と最初は思ったのですが、お話しを聞いていて、やる気モードがしっかりしているなと感じて、ぜひお手伝いさせてもらうおうと思いました。
地元石狩の昔からある牧場の生乳を使っていると聞き、これは珈琲ジェラートをとお願いをしてようやくリリースできました!!
豆配達に行くたびに様々なジェラートが登場しているので、都度新作やその日の気分でチョイスして食べていると、食材のマリアージュが見た目と相まってアート感満載です。ぜひお店で出来立てをいろいろ楽しんでいただきたいですね!もちろん珈琲も。
これからも色々な可能性を秘めているおふたりなので、身体壊さない程度(笑)にチャレンジしていってください!
〈店舗情報〉
北海道小樽市銭函3丁目509−2
Instagram|@wavy_hills